側支柱カーボン装具の研究
Study of single-strut carbon brace
カーボン膝装具の懸垂の工夫
※POアカデミージャーナルVol.22.Suppl. 120-121, 2014.より転載です。

変形性膝関節症に対する
カーボン膝装具の懸垂の工夫

キーワード:変形性膝関節症 カーボン 

○宮内謙太(PO)、二宮誠(PO)
株式会社長崎かなえ

1.はじめに

 変形性膝関節症(OA)に対する装具療法として膝装具が処方されることが多い。内側型OAの場合、歩行時に全体重が患足にかかった瞬間に膝の外側動揺性がおこり疼痛が起こる。膝装具の目的はこの外側動揺性を阻止し内側への荷重の集中を防ぐことによって疼痛を軽減することである。そのために膝に外反力を与えることのできる硬性の膝装具が処方される。
 膝装具を装着する際に問題となるのは「ずれ」が発生することである。ずれのために装具装着が煩わしくなり継続して装具を装着することを脱落される方も少なくない。ずれが起きないためにベルトや滑り止めなど工夫がされるが、筋委縮・肌のトラブルなどの原因となり難しい1)。
 今回は膝装具にフレキシブルな足部をつけることにより完全にずれを防止できたのでこれを報告する。

2.作成したカーボン装具について

2-1.片側支柱熱可塑性 カーボン膝装具

 基本的な装具の作りは第20回日本義肢装具学術大会で発表した片側支柱のカーボン装具と同じである2)。作成した装具を図1に示す。大腿シェル、下腿シェルが片側支柱で連結された構造となっている。支柱は内側に位置する。膝継手はもともとリングロックであったもののリングを取り外し単軸として使用した。大腿シェル、下腿シェルは厚さ2mmの熱可塑性カーボンで製作している。装具中央にあるベルトにより外反力を与える。重量は580gである。
 この膝装具だけでは装着すると若干ずれが発生した。そこで足底板をつけることとした。
前面 側面 後面
図1 製作した片側支柱カーボン装具


2-2. 足底板について

 足底板の目的は装具のずれを防ぐことのみである。足関節の動きを全く制限せず、靴が履きやすいことを条件とした。 足関節の動きを制限しないために、フレキシブルな継手とした(図2)。素材として義手で使われるワイヤー製のケーブルハウジングを選択し、これで下腿と足底板を繋いだ。ケーブルハウジングだけでは破損が考えられたため、弊社で取り扱っている形状記憶合金の超弾性ワイヤー(線径1.6mm)をケーブルハウジングの中に芯として入れた。これでも装具の自重を支えきれるほどの強度はない(装具は自立しない)が懸垂の機能はある。 足底板は靴が履きやすくするために出来るだけ小さくした。素材はPPである。足底板が前後にずれないように踵は覆う形状とした。ただし装着感を考え、踵部分は革とスポンジで製作した。
前面 側面
図2 足底板


3.症例報告

 作成したカーボン装具を実際に2名の方に使用して頂いている。
 (症例1)男性、67歳、左足の内側型OAの方である。以前から弊社で製作している硬性の膝装具N-OAを装着していただいている方である。N-OAにより疼痛軽減は実現されていたが、ずれが発生することを常に問題視されていた。 今回製作したカーボン装具を装着して頂いたが全くずれが起こらなくなったということだった。矯正力も問題がなく疼痛軽減されている。靴も問題なく履くことができた。長年N-OAを使用して頂いていたが、N-OAでなくカーボン装具を装着するようになった(図3)。
 (症例2)女性、59歳、右足の内足型OAの方である。一日中立ち仕事で疼痛に苦しんでおられた。装具装着により疼痛は軽減し、装具装着して仕事をしておられる(図4)。問題点として装具の足底板の厚さを挙げられた。足底板の厚み分脚長差が発生し歩きづらいとのことであった。外出の際は健足の靴に中敷きを追加することで対応しているが、家の中で気になるとのことであった。


前面
図3 症例1


側面
図4 症例2

4.考察

 装具のずれ防止の方法は義手のケーブルハウジングと形状記憶合金のワイヤーを使ったつっかえであった。これは装具の自重を支えられるほどの強度はない。しかしながら、装具装着時はベルトにより身体と密着しており摩擦力により鉛直方向への力が装具に加わっている。したがってずれ防止のためには自重を支えるだけの強度は必要なかった。若干の引っかかりを持たせるだけで十分である。 靴も履くことができた。これも出来るだけ足底板を小さくしたためである。足底板が前後に動かないよう踵を覆う形状にしたがこれも問題なかった。
 今後の課題として、足底板の形状が考えられる。症例2で足底板の厚みが問題となることが分かった。これを解決するには厚みを減らすかもしくは足底板の形状を変える必要がある。 また、さらに靴が履きやすくする工夫を考えることも必要である。現在素材はPPだがもっと柔らかい素材にしたり、ベルクロのベルトを廃止する等より装着感、装着の手間を無くせるように改良をしていきたい。

参考文献
  1. 笠原とし子、渡辺英夫、贄田美穂、本多和行、中尾俊憲、浅見豊子、有薗修、高田浩:膝装具のずり下がり防止法の検討. 日本義肢装具学会誌、3:257-261, 1987.
  2. 宮内謙太、二宮誠:カーボン式の片側支柱長下肢装具の開発. POアカデミージャーナルVol.21.Suppl. 116-117, 2013.