側支柱カーボン装具の研究
Study of single-strut carbon brace
カーボン式片側支柱長下肢装具
※POアカデミージャーナルVol.21.Suppl. 116-117, 2013.より転載です。

カーボン式の片側支柱長下肢装具の開発

キーワード:カーボン、長下肢装具、片側支柱

○宮内謙太(PO)、二宮誠(PO)
株式会社長崎かなえ
1.はじめに

 脳卒中の患者においては、少しでも早く離床させることが必要である。高齢者において早期離床させないと、知的能力の低下、感覚機能低下、口腔機能低下、辱創、関節拘縮、骨委縮、心肺機能低下などの弊害が生じる。それら廃用症候群を避けるために、急性期では救急患者として、早期立位、歩行訓練が必要である。
 長崎の労災病院では、昨年より早期離床の歩行訓練を行うために、NKO膝装具を利用している(図1)。これは左右共通で、長さや幅を患者に合わせてワンタッチで調整できる。これを備品として病院に何台か置いておいて、早期の歩行訓練を行う。足関節は基本的にはフリーとなっていて、ソックスをはいて滑らせている。労災病院では、ベルトやストラップを作って、介助しやすくしている。しかしながら問題点として、調整部分が多くて、故障やガタが多いことと、合わせることや装着に手間取ることがあげられる。
 脳卒中片麻痺の患者に対して長下肢装具が処方されることが多い。装具療法における長下肢装具の狙いとして、股関節周囲筋の働きを促し、足関節の動きを引き出すことがいわれている(膝を固定すると足関節の動きが大きくなる)。つまり急性期だけでなく、回復期の訓練にも長下肢装具は有効である。
 現在の一般的な長下肢装具としては、オーダーメイドの両側支柱式であり、採型してから納品までに1週間以上かかる。そして仮に作製しても、すぐに長下肢装具は必要なくなり、短下肢装具に移行する場合もある。資源の面からももったいないことである。そのため九州ではいくつかの調整式の長下肢装具が作られ、備品として病院に置いておくことも多くなっている。
 現在の長下肢装具の問題点をまとめると、
1) 装着が困難。
2) オーダーメイドで、高コストで納品が遅い。
3) 重量が重い。
ことが挙げられる。また軽量化のため、いままでにカーボンを使った軽い装具もあるが、それは、熱硬化性のカーボンであり、樹脂注形などで手間がかかり、修正、再利用も不可能である。
 これらの問題点を解決するためにカーボン式の片側支柱長下肢装具(以下C-KAFOとする)を考案した。
前面 側面
図1 NKO膝装具

2.開発

2-1. 目標とする長下肢装具

本研究で目標とする装具は
1) 片側の支柱のみで両側に簡単に装着。
2) サイズ(長さ)の調整可能な既製品。
3) カーボン製で軽量・強固。
4) 熱可塑性シートを使用し製作時間の短縮 。
というものである。熱可塑性のカーボンとは、
1) 熱可塑性樹脂がカーボン繊維に含侵した材料
2) 軽量、高強度
3) リサイクル可能
なものである。熱を加えることで何度でも成形しなおすことができる。

2-2. カーボン式の片側支柱長下肢装具

 最初に片側支柱の長下肢装具が可能かどうか試作した。膝はリングロック、足継手はダブルクレンザックを使用したが、ジュラルミンでは剛性不足であり、特に半月などが強度不足であった。強度を上げるために、ステンレスを用いたが、強度は十分でも1.78kgと大変重くなった。
 そこで、カーボンを選択した。カーボンは密度が1.4 kg/dm3とアルミ合金の半分でありながら、強度は2倍くらいある。ステンレスに比べると比重は5分の1で、1.5倍の強さがある。今回我々が使用した熱可塑性カーボンTEPEX(ドイツ製:輸入品)の場合は、実際に強度検査すると、ジュラルミンと同じくらいの強度であった。現在は国内でC-KAFOの為に試作したカーボンシートを用いている。
 成形は、徒手にて熱可塑性カーボンの3mmシートを、基本的な下腿のモデルに合わせ特別に制作した治具を用いて成形している。何回でもやり直しができる。成形温度は300度である。継手は専用のジュラルミン製で、カーボンシートを巻きつけるように加工を施すことで、強度を上げている。
 図2がオリジナルのC-KAFO膝継手である。170gであり、オットボックの17B23の290gや敬愛KI105の270gより軽くなっている。強度も試験してみると破壊強度は17B23が289kg、KI105が1064kgに対し、C-KAFO膝継手は470kgとその間の値となっている。さらに強度アップのために改良中である。
 図3の左が現在製作しているC-KAFO装具である。膝押さえと下腿カフは一体型にした。フリーの足継手を使用し、Tストラップで靴の上から固定している。長さは調節式で、下腿の長さ、大腿の長さを調節できる。 スポンジの厚みにて適合とロック角度を調節できる。重量は800gになった。図4の右はポリオ患者用に製作したカーボン片側支柱長下肢装具である。これは本人がリングロックのほうが良いということで、股関節用継手KI105を使用している。
前面
図2 膝継手の比較強度
上から
・17B23 :290g(ステンレス)
破壊強度2.89KN
・KI105 :270g(股継手)
破壊強度10.64KN
・C-NKO :170g(ジュラルミン)
破壊強度4.7KN


前面
図3 カーボン式片側支柱長下肢装具(C-KAFO)



前面
図4 ポリオ患者用のC-KAFO

3.考察

 現在、長崎労災病院ではC-KAFO装具を用いて、歩行練習をしているが、リハビリの時間が限られている中で装着しやすくて準備時間短縮になっている(表1)。また軽いことで歩行スピードが上がることも知られている1)。ポリオの装具の場合は、今まで重いことで装具を装着しなかったが、この装具は850gということで装着してくれた。家族の方は、いままで歩くときは頭しか見えなかったのが、顔が見えるということで喜んでくれた。
 C-KAFOは開発中である。現在、膝継手は強度アップし、ケーブルでアンロック可能とするものを開発している(図5上)。また大腿部の長さを容易に調整できるようカムレバーを採用したものも考案している(図5中)。下腿部の長さも調整可能である(図5下)。また踵接地時の底屈制御のためにショックダンパーを試作したが片側支柱での足継手の強度に問題がありまだ試作段階である。
 脳卒中片麻痺患者に対して早期歩行訓練が意識レベルの向上や歩行機能獲得に貢献する。その場面では、軽くて装着しやすい備品が求められる。今回開発したC-KAFOはその条件を満たしていると考える。これからもさらに商品性を上げていきたいと思っている。


表1 NKOとの比較

装着時間重量
NKO33秒1.05kg
C-KAFO20秒0.8kg

前面 前面
図5 改良中のC-KAFO
上から
ケーブルロック膝継手
カムレバーによる大腿部長さ調整
下腿部長さ調整
参考文献
  1. 平山大輔:カーボン素材を用いた片側支柱付長下肢装具の使用経験,義肢装具学会誌,28巻特別号,292,2012