超弾性合金の研究
Study of superelastic alloy
3指つまみ装具
※POアカデミージャーナルVol.22.Suppl. 198-199, 2014.より転載です。

超弾性合金を用いた
3指つまみ装具の製作と症例報告

キーワード:超弾性合金 3指つまみ装具 ボツリヌス療法

○増田 勝也(PO)、二宮 誠(PO)
株式会社長崎かなえ
1.はじめに

 脳血管障害に伴う上肢痙縮では、屈曲共同運動による、手・手関節屈曲、母指握り位変形などにより、 巧緻動作などを阻害するため、麻痺側は非実用的な事が多かった。

 しかし現在、広く利用されているボツリヌス療法により、筋緊張の改善を行い、 関節可動訓練や装具療法で実用的な運動を獲得する症例も報告されている。
 
 そこで我々は、上肢ボツリヌス療法後の手指巧緻動作の改善を目的とし、3指つまみ装具の製作を行い、 いくつかの症例を得ることができたので報告を行う。

2.3点つまみ装具の製作

 超弾性合金は、変形させても除荷すると、元にもどる性質をもった金属である。 通常の金属よりも変形が起こりにくいため、メガネフレームや携帯電話などのアンテナに利用されている。 この特性を活かし、繰り返し運動を行い、変形幅の大きい装具に応用できないかと考えた。

 まず我々は、3点つまみwire式装具(1のピアノ線部分を超弾性合金バネで応用してみた(図1)。 使用感に差はほとんどなかったが、ピアノ線と違い、形状記憶後のバネは曲げ加工がしにくく、 指への細かい適合が得られなかった。 また、この形式の装具では、手掌側にワイヤーが当たったり、把持の際に装具が邪魔になることがあり、 この点を見直すことにした。

 次に製作したものは、超弾性合金バネの両端に、プラスチック材を取り付け、バンドにて指をホールドさせている(図2)。 バネは背側を通るため、把持動作に影響しにくい。また、超弾性合金バネは、利用者の状態に合わせ、 プラスチック位置、線形、曲率半径、本数などを変え対応できる。このような点を踏まえ、 本装具をいくつかの症例で使用、評価を行った。

3点つまみwire式装具
図1 3点つまみwire式装具(左:超弾性合金、右:ピアノ線)


3点つまみ装具
図2 3点つまみ装具

3.症例報告

症例1

 男性A氏、44才、左片麻痺(2004年発症)、Br.stage:上肢3/手指3である。 ボツリヌス療法にて、左上肢に200単位を施注した。 施行後は、ストレッチを30分、3指つまみ装具装着にて運動訓練(ボールつかみの反復、ビー玉つかみなど)を30分として、 週2回のデイサービス時に行い。自宅にて同様な訓練を1日に1~2回のペースで行っている。(図3) リハビリの目標として、元理容師として、デイサービスで散髪をしており、自助具なしで櫛を保持することを目標としている。



装具装着時の様子
図3 装具装着時の様子
症例2

 男性B氏、33才、右片麻痺(2011年発症)、Br.stage:上肢3/手指3である。 ボツリヌス療法にて、右上肢に200単位を施注した。 A氏と同様に、週2回のデイサービスにてストレッチと運動を行い。自宅でも同様な訓練を、 1~2日に1回のペースで行っている。 リハビリ目標として、患肢での日常動作を回復させることとしている。

2名とも、ボツリヌス療法3週後に他動ROM、MAS(Modified Ashworth scale)を施行前と比較し、 両方ともに改善があった。3指つまみ装具にてボールやコップの把持を行い、 なんとかコップで水を飲む動作も可能となった(図4)。


装具によるコップの把持
図4 装具によるコップの把持

4.考察

 ボツリヌス療法後の訓練として、3指つまみ装具を使用して、把持・つまみ動作を行っていただいた。

 ボツリヌス療法は施行後のリハビリにて、痙縮の改善を見たが、リハビリ全般の効果にて改善されるため、 装具訓練のみの改善評価をを比較することが難しい。 しかし、3指つまみ装具により、 つまみ、把持動作が可能となっているので、装具効果は期待できると考えられる。今後は、ボツリヌス療法を継続し、 訓練することで、リハビリ目標と日常生活での積極的な運動を行っていく。

5.まとめ

 ボツリヌス療法後には、PT、OT訓練とともに装具を使用した訓練も必要とされる。 今回の装具は、その数多い装具の中の選択肢の一つとして成りえることがわかった。 今後は、症例数の確保とともに、手関節部分のコントロールや、 超弾性合金バネの線形や、曲率などを比較して、検討を重ねていきたいと思う。

参考文献
  1. カラー版 運動器疾患のための装具と補助具 渡辺英夫