株式会社長崎かなえ|介護保険福祉用具貸与指定業者

脳卒中片麻痺患者の膝伸展補助と膝折れ防止の電子制御

第34回日本義肢装具学会 名古屋

2018年11月
キーワード:脳卒中、 長下肢装具、電子制御
㈱長崎かなえ1 )、長崎労災病院 2)
○二宮誠 1) 、原 良憲 1) 、 梶川 大輔 2)

【はじめに】

 脳卒中の患者においては、廃用症候群を予防するために、充分なリスク管理の下に、急性期から少しでも早く離床および歩行訓練させることが必要である。また、初期の歩行訓練から、踵接地時に膝を伸展させ、遊脚期に十分膝を屈曲し、立脚期に膝折れなく安全に正常歩行させることがもとめられている。長下肢装具で従来のように膝を伸展ロックしたままの歩行訓練を避けることで、膝を軽度 屈曲こわばり歩行、ぶん回し歩行などの異常歩行を回避することができると考える。前回我々は、正常歩行パターンを繰り返すように、昨年より外骨格型のロボットアシスト装具を製作した。剛性の高いカーボン製片側支柱の膝装具にラジコン飛行機用のサーボモータを取り付けて、膝の伸展をアシストするようにしたが、以下の問題点があった。
 ① ベルトクラッチを用いたが 、立脚期に膝折れ防止のトルクが足りず、場合により膝折れした。
 ② 搖動モーターであり、ベルトが滑ると位相がずれ、完全伸展ができなくなることがあった。
 そこで今回は、16000rpmで回る マキソンモーターと電磁クラッチおよび減速ギアを用い、またバッテリーも前回 7.4V から 24V に変更し、パワーアップした。センサーは角度センサー(加速度センサー)と速度センサーを使い、アシストONとOFF(フリー)のタイミングをそれぞれ決定した。膝折れ防止は重要で、ワンウエイクラッチにより確実に止めるようにした。装具も改良し、ラチェット機構の固定ベルトにより、膝部をしっかりと装具と固定し、装具の角度と膝の角度に位相差が生じないようにした。

【制御方法 】

 大腿骨と重力方向のなす角度θ(大腿骨傾斜角度)を検知し、前に足を出す方向を+として、θが設定したアシスト開始角度αをある速度で+方向に通過するとアシストONとなりクラッチが入る。
またθがアシスト停止角度βより-方向にある速度で通過するとOFFとなるとともに、クラッチが外れ膝はフリーとなる。フリーとなると立脚後期より膝は屈曲をはじめ、遊脚期には振り子運動により十分な屈曲角度を得るようになる。遊脚後期ではクラッチONとなり伸展アシストが働いて、完全膝伸展にて踵接地を行う。完全伸展にて踵接地を行うことで、膝に膝折れの屈曲モーメントがそれほどかからず、健側も前に出しやすくなり、立脚後期に患側の股関節も伸展できるようになると考える。

【トルクテスト結果 】

健常者の右踵にフットスイッチをつけ 、装具の4か所のカフに圧力センサーを取り付け、そこにかかる 荷重を測定し、また下腿部の傾斜角度も同時に記録した。被験者には右下肢を脱力して歩行してもらった。図 3 のグラフを見ると、モーターによる膝軸最大発生トルク11.6Nmに対して、被験者には膝折れ防止トルク、および膝伸展アシストトルクが、立脚期と遊脚期後期に発生していることが分かる。また、長崎労災病院にて理学療法士に脳卒中患者に対し評価してもらった結果、膝折れなく支持性が出せるとともに、遊脚期に膝が屈曲することにより、介助しやすくなったとの報告を得ている。

【まとめ 】

 前回よりもトルクの高いモーターとクラッチを使うことにより、急性期の脳卒中患者において膝折れをなくし、完全伸展にて踵接地させることに成功した。今後はシステムを小型化して、臨床データーを重ねて、このシステムの有効性を確認していきたい。

【参考文献】

二宮 誠、他脳卒中片麻痺患者の長下肢装具における膝伸展補助の電子制御 . 日本義肢装具学会誌3 3巻特別号、94 、2017

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